Experiment | Research Groups

実験担当グループ

実験 | Experiments

トリハライド気相成長法による窒化インジウムガリウム成長 | InGaN - HVPE

我々の研究グループではトリハライド気相成長法(THVPE法)を用いた窒化インジウムガリウム(InxGa1-xN)の厚膜成長を目的として研究を行なっている。InxGa1-xNは組成xを変化させることで、365 nm~1900 nmの任意の発光波長を得ることが出来るため、発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)のみならず高効率太陽電池材料としても期待されており、次世代の光電子デバイス、低炭素社会構築のキーマテリアルと言える。

このような優れた物性をもつInxGa1-xNであるが、図1に示したように高い発光効率を示すのは現状では青色領域のみであり、それ以上長波長になると急激に効率が落ちることが問題となっている。この原因として次の3点が挙げられる。

  • 基板材料(主にサファイアやGaN)と発光層との間の大きな格子定数差に起因する
    ミスフィット転位の発生
  • In-Nの結合エネルギーの小ささに起因する高温成長の困難さによる結晶品質の低下
  • 量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)による電子と正孔の再結合確率が低下することによる
    発光効率の低下
この問題を解決するためには格子整合する基板材料の開発が急務であり、高品質InxGa1-xN厚膜基板の実現が求められている。

図1. InxGa1-xN系発光素子の外部量子効率と人間の比視感度

当研究室では、熱力学解析により原料系にInCl3-GaCl3-NH3を用いることで従来にない大きな成長の駆動力が得られ、これにより有機金属気相成長法(MOVPE法)での成長で問題となる組成不安定を克服できることを見出した(図2)。当研究グループでは、この原料系を用いたInxGa1-xNの成長を行なっている。HVPE法により高品質InxGa1-xN厚膜が実現すれば従来不可能であった青色よりも長波長域での高効率発光素子の実現が可能となる。

図2. 本成長法(HVPE)と従来の成長法(MOVPE)のInxGa1-xN成長における組成制御性の比較

固体原料を用いたワイドバンドギャップ半導体結晶の成長 | GaN, AlGaN

本研究では、窒化ガリウムおよび窒化アルミニウムガリウム混晶を簡易な装置で高品質に結晶成長する技術を開発すべく、固体原料を用いた新規の気相成長を研究しています。本装置を用いれば、近年注目を集めている酸化物半導体(酸化ガリウム)等の結晶成長も可能であり、装置導入コストも低いことから量産装置への転用も可能です。


図1. 装置概略図


図2. 固体原料CVD法によって成長したGaN結晶のXRDプロファイルおよび断面図

トリハライド気相成長法による窒化ガリウムの超高温高速成長 | GaN - THVPE

近年の震災、原発事故を契機として、ますます社会からの省電力、省エネルギーに対する要請が高まってきている。次世代の光電子デバイス実現、さらには低炭素社会構築のためのキーマテリアルの一つである窒化物半導体は、そのバンドギャップがInNの0.65eV(波長1900nm)からGaNの3.4eV(波長365nm)、AlNの6.2eV(波長200nm)の幅広い領域をカバーすることから、それらの混晶半導体の作製により、可視光全域を含む深紫外から近赤外域の受光発光デバイスに大変重要な材料といえる。本研究では、次世代パワーデバイス実現のキーマテリアルであるGaNの超高品質結晶を目指し従来法と異なる三塩化ガリウムを原料としたTトリハライド気相成長法にて研究を行っています。

その場重量測定による結晶成長・分解メカニズムの解明 | in situ Gravimetric Monitoring

エピタキシャル成長では、基板結晶の表面に原料物質を供給し、高温で反応させることにより結晶成長を行うため、成長を制御するには結晶と原料物質の間の表面反応に対する知見が必要になります。 そのため、これまでに数多くの表面分析法が開発・研究されてきました。当研究室のin-situ Gravimetric Monitoring法(以下GM法)もその一つです。 GM法は試料結晶の重量変化をその場測定することで反応速度を求めることができます。 この分析方法の特徴は、常圧下で重量変化という定量的なデータを超高感度で得られることであり、気相エピタキシーにおける表面反応メカニズムに迫るには非常に優れた装置だといえます。 これまで、GaAsやGaNなどの成長や、サファイアのエッチングや窒化における表面反応メカニズムを解明してきました。 現在はGaCl3(三塩化ガリウム)を用いたGaN気相成長における表面反応の知見を得るために、その場重量測定法を用いて、GaNの成長速度をその場測定することを目的とし、装置の構築を進めています。

構想中の装置概略図を示します。本装置には最高4 ngという超高感度で重量変化を測定可能なマイクロバランスを採用しています。 キャリアガスにはHeガスを用い、基板直上でGaCl3とNH3(アンモニア)を混合します。 混合ガスをタングステンヒーターにより高温に保った基板上で反応させ、GaN結晶成長を行います。その成長反応は次式で表されます。

GaCl3(g)+NH3(g)→GaN(solid)+3HCl(g)

この反応による重量変化をマイクロバランスによりその場重量測定し、GaCl3(三塩化ガリウム)を用いたGaN気相成長の挙動を調査します。


図1. 装置概略図